俺はこう、学費を振り込んだり服を買って靴を本を買ってあげたり公共料金を払ったり携帯料金保険料家賃を払ったり日々の飯を食ったりたまの映画を見たり好きな作家の新作を買ったり煙草を買ったりインスタントじゃないコーヒーを買ったりしていたら給料日前には割とすっからかんなので目の前に横たわる娘を見ながらかなり呆然としていた。肌を撫でても口も鼻も塞いでも反応が無くそういや人って死んだら冷たくなるんだよなって思い出して10分くらい頬に手を当ててやっぱり、良く分からなかった。自分の頬に手をやってあんまり変わらないような気がしてああそうだ、爪とか髪とか伸びるんだっけと思い出したけれどもこんな短時間で目に見えるような形で伸びるわけもなく、うううと呻きながらのろのろと立ち上がってパソコンを立ち上げて「葬儀費用」と検索してとてもじゃないがそんな額を出せないとの予想を裏付けられて肩を落とした。今はそこで眠っている。俺には娘がいる。腐敗の匂いってどんなんだろうと立ち上がって耳に鼻を寄せて嗅いでみた。娘の匂いがした。腐った匂いなんて全くしなくて、俺はそこで初めて泣いて、娘の匂いがして生まれてから何度抱きしめてぎゅっとしてそのときにその度に嗅いだ匂いは同じでも息をしていない朝起きたら娘は死んでいて俺は。