なんて綺麗で可愛いんだろって先輩がたまに部室に来てくれて話をしてくれてそれはもうただただ恋とかとんでもないきっとこの人凄いかっこいい誰かと付き合うんだろうなってもう憧れです憧れのみああああの先輩きっと楽しい夏休み過ごすんだろうなそこに俺はいない夏休みは想像もできないくらい楽しそうな夏休み、だったのに、先輩部室の扉をバーンと開けて「バイトしない?夏休みに数日間私と一緒に田舎に行くバイト」とか言う。俺のこと見て言う。そんなこと言う。窓の外の天気とか、開いた窓から入ってくる風とか揺れるカーテンとか勢いでふわっと舞った先輩の髪とか服とか目とか言葉を紡いだ唇とか、そのときの自分とか、全部、一生忘れない。the door into summer。夏休み一緒、数日とは言え一緒ですぐそばで数日学校の他の誰もそこにいないで同じ建物に敷地内にいて食事時には同じテーブルを囲んで見たこと無かった私服とか着てて露出は高くて話し掛けてくれて笑ってくれてお願いしてくれてお願いってバイトって親戚の前で彼氏のフリをしてとか言う。手を握って言う。これも、誘われたときからずっと、全部、忘れない。忘れようもないことがそっからずっと。


少しは自信のあったことの全て、上を行かれる人だらけの先輩の親戚の前でそもそも自信なんてあったような無かったような、なので、ケンジは主人公は大丈夫だ。何が起きても平気だ。ケンジは多くを望まない。ほとんど何も望まない。手錠かけられて退場するまでに見たこと聞いたことやったことの思い出を持って満足してその後の人生を送れた。きっぱりさっぱり振り切った。そう思う。でもそうはならなかった。


ケンジがやったこと。それは自分にできることをやっただけだ。尊いなって思うのは、最上位の動機が自分にできるからっていう、それ。


もうひとつある。


俺も混ざりたいな。君もういなくていいよ。ひんやりとこええなってシーンが2つくらいあってそれは偽装彼氏がバレるところというかそう、ケンジが陣内家の身内か身内じゃないか曖昧な状態に留め置かれるところ状態とはっきり身内扱いされない状態は、身内/どっちでもない/他人、乱暴に分けて3つと思いどうしてか後の2つがだんだんと恐い、というか嫌だというかそこにいる必要が何ひとつないのに必要とされないのにそこにいる状態はすることなくてもそこにいるそこにいていいのが身内という身内定義、や、職場、とかサークル部活動など似たようなコミュニティーはたくさんあるとしても親戚血縁関係は切り離して考えたいって感じで本当に特殊で、いいなって思ったセリフは家族へで始まる手紙の一節が「いちばん良くないのは一人でいること、そしてお腹を空かせていること」。でも。身内じゃなければ一人でいても気にしない、お腹を空かせていても気にしない。そこにいても何も言われなくて、食卓に席を用意してくれる。飯と場所を共有することを誰も不思議に思わない。居場所を獲得する為の戦いなのか。おばあさんのリベンジなのか。家族を守るのか。世界を守るのか。なんでそこにいるの。とまあ。


なんでいたんだろう。いなよって言われたわけじゃなく、いていいよと言われたわけでもない。ケンジは言わない。いていいですかと言わない。ただ、設備があって、人がいて、こうしましょう、と言う。勿論、それは栄の影響はでかい。栄が持っていたのは住所録と黒電話、それと気構え、やる気。なんだっていいけれど、できることをやる意志。ノートパソコンしかなくてもケンジは同じことをしたに違いない。陣内家にいなくても栄の頑張りを目にした後なら、あの状態ならやったと思う。例え失敗に終わってもラブマシーンに立ち向かう。例えそこに先輩が、夏希がいないとしても。


リベンジとか家族の為とか、ケンジには無い。夏希の為でもない。もしもあるとすれば、何かをしたいと思った誰かのその希望を叶えたいってことだけ。暗号解く以外に(いや暗号を解くことすら含め)ケンジが最もやったこと、この映画で最も頑張ったこと。栄と一緒、一言で言うなら、応援だ。自分にできる全てをもって、応援。おお、微妙に眼鏡のおばさんともシンクロ。*1すげえ。さらに言うと、皆が皆自分にできることを頑張るこの映画、その頑張りは全部他人の為にある。すげえぞ陣内イズム、いや栄イズム。直接顔を合わせていないケンジの友達すら支援の環に組み込んで。


戦うなら戦ってる誰かの為になりますように。親族関係がイズムの容れ物。イズムの共有が親族関係。通過儀礼。


好きなシーンだらけのこの映画、つまり好きな映画だ。また見たいわー。


夏への扉を開くのは可愛い女の子、あるいは、扉の向こうには可愛い女の子。
必須だろ。
なので初っ端からその大前提をクリアしているこの映画、それだけでもうその一点で最高に好きだと断言できる。ああもう一回見たい。夏希先輩超可愛い。


もうひとつ。夏希の獲得(色んな意味で)と居場所の獲得が直結しているとしても、ケンジはどちらも求めない。求めない、それこそが真の栄イズム。見返りを求めない。頑張っている誰かの為に頑張ることそれ自体に重きをなし、それ以上でもそれ以下でもなく、満足感は満足しているその誰かの満足から得る。だからケンジは緩い。映画の最後、ケンジは満足感に包まれている。それは、誰かの為に頑張った栄、それに陣内家の人たちと同じことできたかなっていう満足感。なんて控え目。親戚じゃないから夏希とは一緒になれないとか自分で書いて謎だが謎なこと思ってそうだ。


気付けば栄イズムを体現していたケンジ。だから先輩がいつの間にか栄っぽかったケンジに惹かれるのは当然だ。くっつけ。夏希先輩とくっつけ。俺は許す、というか、くっついて欲しい。自分からは告白しなさそうだから先輩、先輩から是非。


ネットで、ウィンターウォーズとかつまり四季全部見たいって意見を見たが俺も見たい。オータムウォーズ、ウィンターウォーズ、スプリングウォーズと来てサマーウォーズ2だ。めっちゃ見てえ。


しかしあの2人、夏休み終わってから高校でどう過ごすのか。そういう意味でもオータムウォーズを、作ってくれ、是非!


なんだろう最後に。この映画見て死にたくなったってのを映画見る前に見て、結構期待して見た。でも全然そうは思わなかった。スペックが問題なら俺のスペックはテレビに応援してるおばちゃん以下だ。おしゃぶり加えた2歳児だ。でもあのおばちゃんがいなかったら息子の高校は負けた。息子が負けたら世界も終わった。栄イズムに則れば、世界中でコイコイって叫んだ誰一人が欠けたとしてもラブマシーンには勝てなかった。暗号を解いた55人だってコイコイって叫んだだろう。アメリカの軍人だってきっとそう。なんか、そういう映画っつーか、スペックが無いから世界を救えないって絶望するとして、スペックがあったら世界を救うのか。世界のどこかで世界を救おうとしている人がいて、頑張れと思い、コイコイと携帯に向かって叫ぶ。もしかしたら、自分がコイコイって叫ばなかったら夏希は勝てなかったかもしれない。叫んだら勝つかもしれない。イーブンなら、声が出るなら、叫ぼう。声が出ないなら、違う何か、できることを。頑張ってる彼女の為に、使ってくれ、アバター。口座番号とかプライバシーとかなんだっての(と考えると自分のアバター預けるって、超頑張ってる。すげえ)

*1:なので世界の命運を担っていたのはヒット30本打たれたピッチャーとも言える。奴が負けてたら世界は終わったか陣内家は夏希の両親を除いて全滅した。