嬉しい、でも私自傷癖があるよと言って八重歯を見せた三ツ島さんはとても真っ赤で可愛くて綺麗ですごくずっと可愛くて大人であまりにも度を越していて見ていられなくなったぼくは他に向けられないのと勧めて内臓を少し指を一本失った駄目だったなんとか耐えたけれどもごめんごめんなさいすみませんと三ツ島さんの両頬を両手で包み親指の腹で義眼を支えほんとうにすみません三ツ島さんぼくは三ツ島さんに傷ついてほしくないでもこれ以上は無理だ無理ですごめん本当にごめんなさい分かってる分かってるよ、ありがとねと言った三ツ島さんの頬から首に髪の毛へと震えかじかむ指を絡ませると三ツ島さんは気持ち良さそうに微笑んだあとになんだか困った顔で俯きこつんと額がぶつかった翌朝いい匂いを嗅いで目覚めぼくは三ツ島さんが作ってくれたおかゆを一緒に炒めたシーチキンが香ばしいとても美味しいおかゆを食べて食べたその日次の日、また次の日ずっと三ツ島さんは三ツ島さんもぼくも傷つけなくて大丈夫ですかとぼくは尋ね迷いながら後ろから抱き付くと三ツ島さんはトシキのおかげだねと許してくれて伸びをして首を鳴らしたその週はもうとっくに何人も近所で子供を皮切りに消えた三ツ島さんは大学の先輩で英文学を専攻していてもっとたくさん勉強したいから留学したいなと酔っ払うとよく話してくれる切り貼りされた肌はアルコールが入ると綺麗な市松模様のベネチアガラスじみたグラデーションを描き輝くぼくは継ぎ目を撫でながら一緒に行きたいですとお願いするなにをしたらいいですかと尋ねた心からそばにいる為にはどうしたらいいですか? 英語かなあ、とアルコールが入ったときの癖で舌先をゆるやかに噛み千切り千切り不明瞭に三ツ島さんは否定しないでいてくれる頬を寄せていた太もものパッチワークから顔を上げてやっぱりぼくのせいだったのかもしれないと思う。痛みで失神する直前に食べますと答えた赤くて黄色くて白い三ツ島さんは度を越した自傷癖の持ち主なのにその一環で食べたことがあるのは自分だけと笑い初めて食べた他人の味を覚えたのはシーチキンの味でぼくの肉がしててらてらと光る唇を動かしてぼくの名を呼んでぼくは身体を持ち上げてすぐ沈め三ツ島さんの下着とお腹と骨に下着谷間から首へと鼻先で擦りながら匂いを嗅ぎながら凹凸を追いながら丹念にゆっくりと登り進んで喉首に触れると三ツ島さんは顎を上げてトシキも、と泡音と共に唸る三ツ島さんの部屋にはコンロが一口しかないから料理をするにはとても時間がかかる互いの血を絡めたらきっとそんなことどうだっていいじゃないかって気分になるとぼくは思う唇の裏を噛み取って三ツ島さんの肌着を汚し顔を埋めて悲鳴を殺し演習も講義もなかったのに早起きしてアルバイトをズル休みした三ツ島さんは一口しかないコンロでスープと潰して焼いた肉料理それにスパゲティチャーハンやグラタンを作ってぼくの帰りを待ち料理を仕上げ部屋は綺麗になっていてトシキが大学行ってから今までずっと作ってたよおかえりと笑い、呆れながらも喜んだあの日初めて三ツ島さんはぼくにしてほしい私の換わりにしてほしいトシキも私のどこかをここをねえと言ったことを思い出したそんなことは忘れ耳を塞いだ飲み込んだぼくは聞こえないふりをして三ツ島さんを抱き続け眠ってしまった三ツ島さんに毛布をかけてあげたその度にそこらじゅう補われ欠けた三ツ島さんの身体を眺めていて毛布をかけてあげてからもずっと薄い口元に顔を寄せて寝息を聞きながら三ツ島さんのことを触っていて閉じたり開いたりしていてぼくは三ツ島さんに幼稚園児のことなんて尋ねない三ツ島さんも聞かないあのときの肉は全部スーパーで買ったんだって知っていて自分のことを傷つけてほしくないから勉強を続けてほしい留学だってできたらいいなついていきたい一緒に行ってほしいと思うだからぼくは三ツ島さんの為にできることは全部してあげたくてあげたいからそのつもりなんです最初からずっとそうでした。随分待たせてしまいました。待ったよ。今分かった。ありがとう、幸せになりましょう。そうだね、そうしようね。