蝋人形の館 [DVD]

蝋人形の館 [DVD]


映画が始まってしばらくして流れていた音楽がデフトーンズなので好感度メーターは振り切れて最高で、夜のハイウェイを上から映していたカメラがサービスエリアというか道端の広めのダイナーにゆっくりと降りていって何やら不動産情報誌を眺めている美少女とパリス・ヒルトンがニューヨークって家賃ほんと高いねとか喋っていてパリス・ヒルトンと喋っている美少女が余りにも美少女なのでこの映画を借りた俺に間違いは無かったと確信する。なんて柔らかそうでなんていい匂いがしそうでなんていい形大きさの胸。というのも映画を見終えた後にオフィシャルサイトのプロダクション・ノートを読んでみて、映画を見ている最中になんとなく思っていたことがそのままはっきり文章化してあってああそっかこれか、というのはMTVのPVやらCM出身監督第一作目であるところのこのハウスオブワックスなのに、画が暴れない。全然。そっち方面で最高に素晴らしい画作りしてるのはドミノとか思い出したけれど、そっちには行かない。なんでスラッシャー映画でこの落ち着いた丁寧な画作り。

超可愛い美少女の彼氏はやっぱりいい感じにかっこいいのだけれど、行動が発言がなんだかアホっぽくてえーこいつヒーローなの?なんかやだなあと思いながら見ていたらヒーローは彼ではなく、真のヒーローが明らかになった辺りでこの監督の……、真摯な、と表現していた人がいて(だからこそ見たいと思って借りた)その真摯な姿勢、画作りの効果がこう、あー。

ティーン映画でスラッシャー映画でデート映画をクリアした上で、これは家族映画だな、と思う。悪役含めて家族意識が希薄なキャラから退場していく。真のヒーローはこの子こんな可愛かったのか途中まで気付かなかった24のジャックの娘の双子の兄。この二人はなんだか上手くいってないっぽく始まるこの映画。

この映画は家族の映画。

最も感動的なのは全部エリーシャ・カスバートと斜に構えた無口で過去に犯罪を犯したらしい遠い目をした兄貴絡みで個人的にはここ。兄貴が車運転してて軽薄な友達が助手席にいて二人で喋る。友達は言う。「あいつらいつまで続くんだろうな。お前の妹絶対俺に気があるって。そんな目でずっと俺のこと」「それはねえ。それは絶対に」「お前あいつ(妹の彼氏)のこと嫌いだろ?」「……いや、俺はあいつのこと嫌いじゃないさ」「まあ俺も、そうだな。嫌いじゃないな」妹はそこにいないし妹の彼氏の話をしているけれど、これ兄貴が真のヒーローと化す前の場面だけど、いかに大事な妹と思ってるかって妹不在だからゆえに伝わってくる。俺には伝わってきて、ここ、この映画で一番好きなとこ。解説するのもあれですが妹が大事な兄なのでその妹が大事に思うものは自分も大事に思いたい。嫌いになりたくない。あと服を貸してあげるとこ。

この兄貴とこの妹で続編見たいと思ったけれど、不思議なことに、スラッシャー映画じゃなくていい。スポーツでもコメディーでも、この二人ならなんだっていける。たまたまホラーな街にぶちあたってしまってたまたま友人達がボロボロに死んでいってしまったけれど、この二人が見れるならほんと、なんだっていい。どこにいたってこの二人がそこにいるだけで勝手にドラマが生まれるだろう二人は、全部この二人に収束してしまう、させてしまうパーフェクトな兄と妹。

溶ける階段を、負傷した足を引きずりながら、動けない自分を無視して妹を追う犯人というかまあ犯人に「やめろ、行くな!俺を狙えよ!」とか妹の名前とか叫びながら頑張って昇っていくところとかもう。光り輝いてましたよ家族愛。凄かったですよ。この映画あんまり売れたって話聞かないけれど、それはどんなに恐ろしい場面があったとしてもこの二人の家族愛が前面に出すぎてるからだと思う。全部添え物、引き立て役。ホラーのつもりで見たらホラーじゃなかった。オーストラリアに街一個作ったのもそう。この二人の為。ホラーじゃないっす。妹思いの兄と、兄思いの妹の映画です。あー続き、っていうかこの二人見たい。題材はまじでなんでもいい。この兄と妹がいればそれは勝手にいい映画になる。

「兄さんは枠を作って、その枠に合うように生きてる。でもその枠に閉じ込められてる」とか言うんだぜ妹。非難ぎみに。悲しそうに。そしてそのセリフが100%理解できる兄は、怒るでもなく、無言で目を逸らす。多分このやりとりを起点にこいつ実はいい奴なのかっていう設定を性格を明らかにしていって最終的にヒーローに変身。ていうかもともとの優しくて強い兄に戻るのか。超いい。いい映画だ。好きだ。他になんかあったっけ兄妹あるいは姉弟映画。ああDOOM。でもあれよりいい。