屋敷女 アンレイテッド版 [DVD]

屋敷女 アンレイテッド版 [DVD]


アリソン・パラディの家の前に立ち、ガラス越しに煙草を吸う場面でブラック・ラグーンとかレオンとかジーザスとか連想してしまってもう駄目だった。あれはもう、何かって。戦いに赴く前の目と佇まいは暗殺者というか戦士。シュワルツネッガーのコマンドーで最後島に乗り込むけど島に降り立ったときのシュワルツネッガー。仮面被って屋根に立ったサン(もののけ姫)。超ヒロイック。超サブリミティー。何が言いたいかってこれ、煙草に火をつける、顔が浮かび上がる。俺が知ってるこの画面は、この絵面は、いかにすかっと爽快に敵をやっつけるかと見てるこっちがわくわくする場面でしか今まで見たことが無い。他に無い。それしか無い。だからもう、後はずっと、どれだけ強く、どれだけ思いもよらない方法で、どれだけかっこよくどれだけ圧倒的に絶望的にカタルシスを持ってアリソン・パラディを倒せるか、目的を果たせるかっていう映画に。なぜかって。ベアトリス・ダルがあまりにもかっこよすぎるから。映画を見る前には全く予想もしなかった、まさかどきどきとハラハラとするのはベアトリス・ダルに危機が迫ったときがほとんどっていう逆転現象。が起きる。俺には起きた。血塗れた唇に煙草を挟んでフィルター噛んで火をつけて顔を歪めて煙吸って吐いて苦痛に堪えるって発想がもうチョウ・ユンファトム・サイズモア、仁侠映画か戦争映画でしか見たことのないかっこよさで役名はシンプルにThe Womanであるベアトリス・ダル。カチコミか突入に赴く理由以外過去も現在も全く明かされないベアトリス・ダルがどんな人かって勝手に想像するにどっかの組織に属する鉄砲玉か暗殺者で組織を離れて個人的復讐に赴く女。いやもうまじそんな感じ。最初から。しかしベアトリス・ダルは暗殺者ではない素人なので、困難に際して動揺したり困ったり悔しがったりするのだがそんな動揺したり困ったり悔しがったりするベアトリス・ダルを見て何を思うかって、俺が何を思ったかって、驚くなかれ、親しみだ。人間的弱さを見せる善のヒーローに、悪のヒーローに感じる親しみ易さ。レオンが牛乳飲んだり俺が死んだら貯金全部あの子にあげてくれって言いにいったり植物園の水流システムを停止させるナウシカな感じ、で腕にダメージを負うベアトリス・ダルを見て何を連想するかって難しいが近いのは使途に同化される零号機の中で苦痛に顔を歪める綾波を見たときのような感じ。いやもう、なんかもう。ベアトリス・ダルは予想もしなかった困難を、圧倒的不利な状況を打破して最後に目的を果たす。でも重症を負う。ほっといたら死ぬかもっていう重症。重体。ラスト、目的を果たして達成感に包まれ椅子に沈むベアトリス・ダルは、例えるなら自爆する寸前のレオンが青空の中に見た光。またレオンだがシェイプ・オブ・マイ・ハートが流れたら涙腺が緩むかもしれない嘘みたいなエンディングは何が嘘みたいって、そんな気分になった俺の気分が嘘みたいな静謐なエンディング。薄れていく意識の中目的を果たした満足感で静寂の中。戦う女ヒロイン。バラライカとかシェンホアとかそっちですこれ。ああそうだやっとピッタリな例えが。この映画のベアトリス・ダル、無限の住人の、無骸流の百琳。漫画化するなら広江礼威沙村広明。そんな、そういう。だからブラック・ラグーン無限の住人をもしも実写でやるのなら、この映画監督で決まりだ。ひたすらに美しくかっこよく一軒家を血で染めていくベアトリス・ダル、ブラック・ラグーン無限の住人も戦闘場面の構図が、人を切り裂いて肉がぶっ飛ぶ場面のかっこよさがまるで絵みたいな、絵だけど、歌舞伎で言う見得のように完成された見得がある構図。(略)かっこいい女性がかっこよく困難を乗り越えて目的を果たす映画だ。バイオハザードミラ・ジョボビッチが好きな人は絶対気に入る。あと、ベアトリス・ダルは怖くない。それはひとつ。理由はひとつ。彼女の全部の行動には全部理由があるからで、なぜそんなことをするのかってのがはっきりしてるからだ。そう思うから、この映画で最も怖かったのは発狂する警官と彼の取る行動。あれは怖い。怖かった。ああそうだ。この映画交通事故の場面から始まるんですが、事故車のワイパーが超怖いっす。まるで絶命寸前の人の腕。これも怖い。最後看護婦。理由の無さが恐怖に結びつくのなら、あの看護婦は物凄く怖い。(略)この映画が何かに失敗しているとしたら、それはベアトリス・ダルがかっこよすぎること。そしてベアトリス・ダルが魅力的すぎること。あとベアトリス・ダルが美しすぎること。他の全てを圧して。欲しいもの、守りたいものは同じなのだから、ベアトリスばりに何もかも喰ってしまう存在感の女優さんがアリソン・パラディの役だったら……、いや、そんなことしたらエイリアン2。パワードスーツ着たシガニー・ウィーバーとクイーンエイリアンのような母親対決があの一軒家で起きてしまう。それは大変だ。