KT [DVD]

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「狼は生きろ。豚は死ね」「豚は生きろ。狼は死ね」狼なら2000万円使え。豚なら2000万円貰っとけ。随分前に文明の衝突って本が流行って、普段衝突するのは車の事故くらいしか思い浮かばないので聞きなれない言葉だ耳に残るなと印象的で、それから似たようなことがあればやっぱり耳に残って、それは概念戦争って言葉だったり、俺の爆弾は思想だ、俺は思想でテロを起こすとかそんな言葉。見る度にどんどん父権的にマッチョになっていく佐藤浩市主演。デニス・クエイドのように。なので最近の佐藤浩市で最高なのは「お父さんって暇な地方紙の記者なくせになんであんなに忙しそうにしてんの」素直な息子の頭を後ろから鬼の顔でぶん殴るクライマーズ・ハイだ。次点「抱かせてくれてありがとう」身も心も傷まみれな女の子に言うこの映画。市ヶ谷に付き合えなくて市ヶ谷で死ねなかった男が主人公だ、と映画冒頭で提示される。三島由紀夫は、多分、法律を変えよう、国を変えようと屋上に立ったとき、自分こそが思想だ、くらいの強い意志を持って立った。新しい国を作りたいと思う、そう思う俺が新しい国を体現しなきゃいけない。そうでもしなきゃ既存の国に張り合えない。国と張るなら俺が国にならなきゃいけない。金大中もそうだ。記録映像で流れる、大群衆の前で演説する金大中はほんとにそんな感じだ。新しい概念を提示するなら、自分こそがその新しい概念にならないといけない。三島由紀夫と死ねなかった佐藤浩市は、金大中の暗殺計画に加担することで満足しようとする。これは俺の戦争だ、と佐藤浩市は言う。でも、三島由紀夫を倒したのは国だった。結局彼は対峙していた国に勝てなかった。金大中が戦っている相手も国だ。金大中に勝てるのは国しかいない、あるいは国を体現した個人じゃなきゃ勝てない。これは俺の戦争だ、と佐藤浩市は言うけれど、その戦場は佐藤浩市の用意した戦場じゃない。それは誰の戦争だ、と思う。三島由紀夫金大中も戦場は自分で用意した。この映画で一番かっこよく撮られてる場面、直前の船倉場面からなんとなくレザボア・ドックスなキム・ガプスが綺麗な青空に浮かぶ自衛隊機に単身発砲しながら放っておいてくれと絶叫する場面。金大中を殺せなかったキム・ガプスだけれど、もしも彼が殺害に成功するとしたら、あの場面で、拳銃で自衛隊機を撃ち落す。国になれなきゃ金大中は殺せない。国になれなきゃ自衛隊機は落とせない。演説する三島由紀夫に野次を飛ばした自衛隊員は、その瞬間国だった。三島由紀夫にはそう見えたんじゃないかと思う。国になれなかったし、国と戦う戦場も用意できなかった佐藤浩市は、何がしたいのかいまいち分からない彼はだから当たり前のように退場させられる。あっさり迎えの車に乗る。あっさり。弾が一発だけ入った拳銃を渡されて「二・二六の野中大尉ですか。私のこと、勘違いしてませんか」「私は、自決はしません」かっこよくそう言って拳銃を返して敬礼する佐藤浩市はもう、なんなんだ。野中大尉なら金大中を殺せたし国を自衛隊を変えられたって意味なのか。それなら確かに勘違いだ。生きたいって、体の半分を鮫に食われても生きて韓国に辿り着きたいと願った金大中とも全然違う。どこまでも。ああほんと、任務停止を命じられたそのときに2000万円を持ってどことなく小西真奈美に似たヤン・ウニョンと退場すれば良かったのに。別の戦場に、彼だけの。逃げたという婚約者と違って、国と国としてヤン・ウニョンと寄り添う戦場だってあったのに。なんつーかもう、呼び寄せるなよヤン・ウニョンを。なんだそりゃ。お前がヤン・ウニョンのとこに行け。


「退官すると聞いたが」
「日陰者に耐えられなくなりました」
「君は栄えある防大一期生だろう。吉田茂の卒業式の言葉、忘れたのか」
「「君達が、日陰者であるときのほうが国民や日本は幸せなのだ。耐えて貰いたい」」
「そうだ」
「日光浴したくなったんです」
「やめて日が浴びられるのか」
(中略)
「制服や戦闘服を着てない自衛隊ってなんですかね」
「君がいつも言っている、日陰者の日陰者さ」


ほんとにそんなこと言ったのか吉田茂。て、これ。

君達は自衛隊在職中、決して国民から感謝されたり、歓迎されることなく自衛隊を終わるかもしれない。きっと非難とか誹謗ばかりの一生かもしれない。御苦労だと思う。しかし、自衛隊が国民から歓迎されちやほやされる事態とは、外国から攻撃されて国家存亡の時とか、災害派遣の時とか、国民が困窮し国家が混乱に直面している時だけなのだ。 言葉を換えれば、君達が日陰者である時のほうが、国民や日本は幸せなのだ。どうか、耐えてもらいたい。

なんつーかなあ……。
本当に好きなコピペを貼る。

2年前旅行先での駐屯地祭で例によって変な団体が来て私はやーな気分。
 その集団に向かって一人の女子高生とおぼしき少女が向かっていく。

少女「あんたら地元の人間か?」
団体「私達は全国から集まった市民団体で・・・云々」
少女「で、何しにきたんや?」
団体「憲法違反である自衛隊賛美につながる・・・云々」
少女「私は神戸の人間や。はるばる電車のって何しにここまで来たかわかるか?」
団体「・・・・?」
少女「地震で埋もれた家族を助けてくれたのはここの部隊の人や。
   寒い中ご飯作ってくれて、風呂も沸かしてくれて
   夜は夜で槍持ってパトロールしてくれたのもここの部隊の人や。
   私は、その人たちにお礼を言いに来たんや。
   あんたらにわかるか?
   消防車が来ても通り過ぎるだけの絶望感が。
   でもここの人らは歩いて来てくれはったんや・・・・」

最初、怒鳴り散らすように話し始めた少女は次第に涙声に変わっていった。
あまりにも印象的だったのではっきり覚えている。
団体は撤退。
彼女が門をくぐった時に、守衛さんが、彼女に社交辞令の軽い敬礼ではなく
直立不動のまま敬礼していた。

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