島根の女の子に心を痛める俺は1/2の騎士のグレイマンの章だけ読み返す。3人しかいない女子応援団の団長だったという小柄な彼女の声、あの声援でどれだけ勇気が出たことか、みたいな同級生元野球部員のコメントを読んでのこと。ぐっあ泣きそうだ。何が悲しくて留学資金を溜める為にアイスクリーム屋でバイトしてた子が五体バラバラにされなきゃいけないんだ。ああなんで初野晴が好きか分かった。ラフレシアの絶望と動機だ。

長い

高校生でモデルをやってたくらいかわいい女の子が10年くらい前にいたそうだ。そんな女の子周囲にいなかったからおれにとってそれは凄いことできっと物凄くかわいかったんだろうと思うどうでもいいけど高校って打ったら口腔とまあいいけど。その子が交通事故に遭った。信号無視か余所見運転か、とにかく非は彼女には無く、この子はその結果下半身不随という重症を負った。重症の結果生涯下半身不随という障害が残った。高校生のときだから10年くらい前のことだ。脊髄を損傷しヘルパーの助けを借りながら車椅子生活、を余儀なくされて。10年後、つまり今年、この子は働いていた。障害者の自立生活の為に設立されたNPO法人の職員として。この類のNPO、又聞きだから本当か否かはわからないけれど日本に2つほどしかなく、彼女はわざわざ引越しをしてまでそこで働いていた。理由?自分と同じような人を助ける仕事をしたいとかそんなんだとは思うけれど、詳しくは知らない。想像。NPOがあるのはとあるマンション。「障害者の自立生活のため同法人が建設し1階が駐車場、2階が同法人事務所。3階から7階の12室が障害者らの居住施設」だったそうで、彼女はここの6階に居住しながら2階で働いていて。先月のこと。この子はヘルパーに電話した。「床ずれを治療する電気器具から煙が出ている」。寝台が動いて体の向きを変えてくれるやつのことだ。次にこの子は消防署に電話した。「マンション自室のベッドが燃えている。体が不自由で逃げられない」。消防隊員が駆けつけて彼女をの部屋に着いたとき、ベッドの周囲4平方メートルだけが燃えていて上にいたこの子はぐったりしていて意識は既に無く腰から下に重度の火傷を負っていて、病院に搬送されたけどそこで死んでしまった。ベッドから降りるのを躊躇するほど激しく炎が燃え盛っていたのか、自力でベッドから降りられない程に重い下半身不随だったのか、よくわからないけれど。10年たっても相変わらずかわいく、というか美しく成長していた彼女は同僚によるととても仕事熱心で。いや。いや知らないけど熱心だったろうとは思うこれも想像。実家は栃木で法人所在地は大分で。最初は国立別府重度障害者センターってとこに入所していて、次にここのマンションに移り、やがてそのまま働いていたのか?その辺りの事情は知らない。

一週間くらい前に聞いた話で、ふと思い出して検索してみて。いくつか引っかかっていたのはこの子がおれと同じく25歳であるってことと、そりゃないよっていう不幸……、いや不運がこの子の人生に幕を下ろしたってことと、おれは五体満足な25歳で生きてるってことと、この子が美人であるってこと。

この子が美人でなければここまで気になっていたかどうかは、わからない。あと知ることができたかどうかも。この子が不幸な分他の誰かが幸福、この世の幸せの量は定量、とこの話をしてくれた人に口も軽く言ったけれど、そのときは特に何か考えていたわけではなく、今思うに多分そんなことはない。この子が不幸だからって別に他の誰かがその分幸福って、そんなことはないと思う。や、不幸に見えるけど実は幸せだったんだよとかそんな話じゃなく。この子はマジで不幸だった。不運だった。そんな人だった。そういうことにしておきたい。装置の不具合で火事が起きたとき、他の職員も入所者も、全員NPOの催しで外出していて留守だった。この子はなんで残ったんだろう。知らないけど。ヘルパーは朝からこの子の所に来ていて、出火時は昼食の買出しに出かけていて不在だった。何か一つでも状況が異なれば、この子は死ななかったように思う。整理してみよう。この子が美人だったからダラダラとキーを打っている。それは多分事実。幸せ定量説が嘘だと思うのは、おれが生きているから?おれが死んだところで、たいした幸せを誰かに与えられるとは思わない。よりでかい幸せを与えられる、でかい不幸の星の下にいる、例えば彼女に死んでもらった方がそのほかの誰かにとっては換わりにでかい幸せ。というわけで、4月21日に誰か25歳の人間が死ぬとしたらそれはおれではなくて彼女、というのはあんまりだから嘘。何かが言いたくて書いてるわけじゃないから特に結論も見つからず、長い。先月亡くなったその子の名前は五十嵐えりさん。なんてことを書くのは、すぐに忘れちゃいそうだからで、忘れたくないのか、いや結論が何か見えれば忘れてもいいのだろうけれど、見えないので思い出すように。たまに思い出すだけで供養の代わりになるのなら。充分じゃないか?この瞬間誰よりもおれは見ず知らずの五十嵐さんを供養してないか?供養したいのか?それはなぜ。ここまでダラダラ書く理由。彼女の換わりに他の25歳の誰かが死んだ方がよく、そんな誰かは大勢いて、例えばおれはその身代わり候補筆頭だったろうにそんなこともなく、やっぱり彼女は死んでいる。おれが死ぬことで彼女が生き返るなら、その前に10年前の交通事故を無かったことにしたい。あるいは買いに行く必要が無い程度には食材を揃えておいてくれ、と、全然殊勝じゃねえ、やはり「あー、そりゃ不運な人だったんだね。いるんだね世の中にはそんな人」の一言で済ますのが楽だと思うし、真実だと思う。おれには全然関係ない話だ。済ませられないのは、多分この子が美人だったから。下半身不随でも元モデルだったくらい美人で障害者の為に立派に働いている女の子と今のおれ、って比べるまでもない。でも翻って自分は、と思いたくなる、思ってしまう、自分より不幸な人を見てもちっとも幸福な気分になったりしねー。逆はあるのに。なんだ、どうせ殺すなら不細工で下半身不随の25歳女性をなぜ選ばない。多分どっかにいる。年齢に目を瞑れば同じ施設にいたんじゃないのか?なんでなんで、と文句は尽きず、交通事故まで遡る。だからなぜなんでって思うのかってことで、それはだから、なんだ、

薄幸の美人、という設定は実に強い。そしておれはそんな設定に弱い。滅茶苦茶強力だ。滅茶苦茶大好きだ。そばにいたら障害なんてものともせず好きになって付き合ってくれって言うだろうし同級生だったら栃木から大分まで行くし車椅子はおれが押す身の周りの世話を全部しながら二人分の収入が得られる仕事をして何よりも幸せなのは笑ってるこの子の笑顔でそれは何よりも交通事故で死ななかったからで今そこにいるからで、薄幸だから?美人だから?モデルやってるような同級生に果たして話しかけられるだろうかとかまあいいけど手っ取り早い結論!代わりにお前が死ねば良かったのに!投げ!それで何かが変わるわけでもなく、この子はおれの死を知らず、大分で今日も笑顔。元気。薄幸だから?いやかわいいから。一緒に旅行しよう。世界中で世界中のビールを一緒に飲みながらこれは美味いこれは不味いとか酔っ払うの楽しいと思うよそれくらいしてもいいんじゃない?迷惑かける?全然そんなことはない!今回ばかりはお前の幸せがおれの幸せだ!だから気にするな!ってもーんあー何字だよこれ付き合ってるつもりでよー。どうしようもないが生きてりゃ良かったのに。使い方がなんか違うような気がするけど死ななきゃ良かったのにではなくなぜ死んだでもなく必要性でも不幸でも不運でもなくそんな言葉はどうもしっくり来ないかわいそうで思考を止めないあえてだって他の誰も他の誰もって好きだなおれまあいいけど他の誰もどうすることもできなかったのならやっぱりどうすることもできなくてもこの子がなんとかすりゃ良かったと無茶言うなって感じだがそれでもせめて生きてろとああ無茶言ってもー腰が痛え。合鍵手に入れる暇あったらドアぶち破れというくらいは不満。そう不満。何が不満て、死んだこと?25歳ってこと?美人ってこと、かなあ。下の記事には一言もいやそりゃ書かないだろうがTVのニュースで写真見たこの話を教えてくれた人によればかなりの美人。美人が死んだことが不満というかいつかは死ぬだろうが……状況が?事実が。己も含めた多分全部が不満。おれが26歳だったら24歳だったらここまでと自分の年齢もわかんないけどなんか不満というかやはり文句つけたいというか混乱というかやっぱりオチもなく。

http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/jiken/news/20070422k0000m040097000c.html

「火災:足不自由な女性、ベッド燃え死亡 大分・別府」

実は生きてたってのどうだろう。この記事は嘘で。最初っから会った事もない他人行ったこともない大分、嘘かもしんないじゃんそう。判断するのはおれで視聴者で読者で信じなくても誰もこの子も文句言わない。

救急隊員よりも先に飛んで帰ったヘルパーが燃えるベッドからなんとか転げ落ちて廊下か隣の部屋かどっかで倒れてる所に間に合って救急隊員と合流して救急車乗ってこの子は軽い火傷で無事で「足が焼けちゃったけど元から動かなかった足だしね」とか言って笑うの病院で翌日病室で見舞い客に家族にいたかどうか知らないけど彼氏に。極めつけは「だからもう、今日から仕事はできます。できるよ」馬鹿言うんじゃない今日は寝てなさいえー?とそろそろ包帯も取れて今頃見舞いに来た家族と一緒にGWで帰省してた栃木の実家から昨日帰ってきて今日仕事して寝てるんじゃない今頃この子別のメーカーの似たようなベッドの上か床に布団敷いてあるいは強気に同機種のベッドの上で大分で。んで今回の経験を基にして障害者の為になにかでかい仕事を果たしたりするわけ。近い将来。ビール飲みに海外行ったりも海外行ってビール飲んだりもする国際会議とか出て発表したりする何か障害者関係のNPOの国際会議で。生きてれば。いや生きてるから、そのうちする。と思う。
http://myhome.cururu.jp/digitalbath/blog/article/41001142449

初野晴でぐっとくるポイントってどうしてか全部こんなんだ。登場人物が涙を流すところで俺も全部泣きたくなる。名前は、と聞かれたロク、宝石を発見した地学研究会、アスモデウスの先生。どれだけの人が島根の都さんの無事を祈って必死こいて探したか、考えるだけで辛い。残り2人の応援団の気持ちとか今どんなんだって。どんなんだよ。底の底だろう。潰れそうだろう。ありえねえ。顔に酷く殴られた痕、五体切り離し。理由があるなら聞かせてくれ。なんでそんなことを。ひでえ話だ。ほんと酷い。酷くないか。ありえねえよ。

1/2の騎士 harujion (講談社ノベルス)

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初恋ソムリエ

初恋ソムリエ


水の時計ってデビュー作を俺はまだ読んでないんだけど、粗筋知ったから読めない。とてもじゃないけど読めない。辛すぎるよその粗筋。読みたくねー。
俺は28になってしまったが、あと10ヶ月で29だ。生きてりゃ五十嵐さんも28、29。信じらねえ。死ぬべきじゃない人がどうして死んでしまうんだ。たまに思う。同い年だから。多分そう。ずっと思い出す。忘れたくはないな。